2009年06月28日

外為法による「役務取引(えきむとりひき)」の規制とは

 国家間での自由な通商貿易が活発に行われている状態が、両国にとって非常に好ましいことであるということは先進諸国間の関係においてきわめて当然のことであると合意されている。しかしそれは全くの理想論であって、現実の国際関係というのは非常に難しい。この原則が適用できないそれぞれの国家、地域の特別な事情があらゆる国家間の通商取引の場面において常に存在する。

 経済活動の中心であるアメリカへVISAを免除されて渡航できる国家は、アンドラ、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルネイ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、イタリア、韓国、日本、リヒテンシュタイン、ルクセンブルグ、モナコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェイ、ポルトガル、サンマリノ、シンガポール、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、スロバキア、マルタだけである。(2008年12月30日現在) お隣の韓国ですら、つい一年前はその免除プログラムに入れなかったということは、私達にはあまり知られていない。 当然ながら中国やロシアなどは米国の基準からすれば、はるか圏外にある。渡米に際して、ビザ免除渡航者は、電子渡航認証システム(ESTA)で認証され、米国入国地で確認される必要があり、米国国土安全保障省(DHS)のUS-VISITプログラムに登録されることになっている。

 国家権力の支配体制が違えば、当然同盟国(ホワイト国)と同じ条件での通商取引等はあり得ない。そもそも経済発展の格差が極めて大きくなっている現在の国際社会においては、地球環境保全という課題一つを取り上げても、それぞれの利害が衝突し共通の合意を得ることが難しい。

 特に先進技術分野の国家間役務取引は、それぞれの国の国益が厳しくぶつかり合っているため、いかなる国においても国際間の通商取引には非常に厳しいそれぞれの国の法規制が敷かれている。

外為法の「役務取引」の規制というのは、まさに「モノ作り王国ニッポン」のわが国の国益を守るための基本法である。

 中国とかロシア、東南アジア、インドなどいわゆるBRICS(経済発展が著しいブラジル (Brazil)、ロシア (Russia)、インド (India)、中国 (China))経済の台頭は、この「役務取引」に係る法規制とその背景をメンバー一人一人が正しく理解し、先見性を持って取り組む姿勢が整っていない企業は、次の時代の存続は危ういものとなるであろう。

 米国国土安全保障省(DHS)のUS-VISITプログラムに登録された時から、その人の全ての行動が個人IDにより四六時中追跡されることになる。例えば、とりわけ注意を払わなければならないものは、ITシステムと連携する全ての行動である。 ITのコンピュータソフトウエアに係る規制内容の正しい認識から始めるのがよいであろう。全ての戦略的なソフトウエアには著作権が存在し、そのソフトウエアを提供する場合には、双方が役務取引の契約書にサイン(合意)をすることが義務づけられている(キャッシュカードの利用契約と同じ)。

 ソフトウエア、ソフトウエアを組み込んだ機器、その記録媒体、その設計図等全ての提供について、外為法に基づく「役務取引の該非判定書」 を携えることが必要だ。 この規制は、いま急に始まったものではなく実は既に数十年前からずっとあったのであるが、一般にはほとんど知らされてはいなかった。 国際間の取引が急増し、規制の事実上の野放し状態が国家安全保障上重大なリスクにさらされる事例、違反事件、犯罪が顕在化してきた。今回の外為法の大幅改正、規制の強化はそのようなSecurity Risk をカバーするという背景がある。 海外との役務取引に係る全ての技術者(研究者、大学教授等も対象外ではない)は、自らの専門技術のあらゆるやり取りについて、正しい手続きによる「役務取引該非判定書」を所持しなければならない。 今回の法令改正により、たとえその伝達の現場が中国やODA対象等の海外であったとしても、外為法違反の事実が発覚すれば日本人は日本の国内法の処罰の対象となるということが明記されている。「役務取引の該非判定」については、STGの安全保障輸出管理コンサルティングにご相談ください。

 コンプライアンス経営は、最強の企業戦略である。